第3回講座●ドイツの絵本、挿絵本の歴史

3日目。今日の春の風は強い。参加者の人数は初日と変わらず。
今日のテーマは「ドイツの絵本、挿絵本の歴史」 ルートヴッヒ・リヒターとヴィルヘルム・ヴッシュを中心に
ルートヴッヒ・リヒターとヴィルヘルム・ヴッシュ・・・またまた、知らない言葉がでてきた。これは多分人名ね。
講師は、人文学部教授の鈴木滿先生。優しそうな方だ。

技術の発達が、表現の幅を広げた

講義はまず、15〜17世紀の木版画を見せてくれるところから始まった。

【1】幼児というより、10代初期〜大人までに喜ばれた民話集の挿絵だ。「魔女とその愛人の悪魔」・・・魔女というより、ブルジョアの奥様風の女性と雄羊の角が生え、耳がとがり、ひずめ・しっぽのある悪魔の絵。シンプルな線で書かれていて雰囲気がある。
「魂を秤に掛ける大天使ミカエル」「サタンのでん部に接吻する魔女」
印刷技術が柾目木版画から木口本版画・石版技法→腐食銅板技法と進むにつれて、精緻な絵が描かれるようになった。それにより大衆にも多く流布するようになった。

【2】ノイルッピン一枚絵 → 贅沢品から大衆化へ。庶民層用・・・行商人によって売り捌かれた。

【3】ミュンヒェン一枚絵 → 美術品としての絵。上・中流の市民層・・・書店か文房具店で売られた。

特徴
 ・上質紙
 ・芸術家の手による質の高い絵
 ・けばけばしくない彩色
 ・多色彩り
 ・興味深いテーマの採用・・・古代の事物・異国の風俗・博物学・数々の物語・昔話・伝説・寓話・含蓄のある滑稽さ
 ・対象は、中・上流の市民層
 ・高度の娯楽と啓蒙が目的

長靴をはいた猫

写真をみせてくれる。これが素晴らしい。

例えば「長靴をはいた猫」の絵・・・ずっと遠景に物語の冒頭が描かれていて、前面になるに従って物語の場面・場面が描かれるという仕組みになっている。
色合い・構図・・・美しい♪
先生もこれらの絵の説明に多くの時間を多く費やして下さったので、講座の副題「ルートヴッヒ・リヒターとヴィルヘルム・ヴッシュを中心に」という訳にはいかず、「その説明はレジメに書いてありますからご覧になってください」とのこと。

以下はそのレジメから(一部)
ルートヴッヒ・リヒター(1803〜84)ドイツの画家、図案家。
ドイツの日常生活ののんびりとした叙景・愛すべき諧謔(ユーモア)・豊かな空想力により挿絵画家として一世を風靡する活躍をした。
ヴィルヘルム・ヴッシュ(1832〜1908)ドイツの画家にして文人。
ざっとした筆致で性格と状況をみごとに描き出す能力と縦横の才気、鋭い風刺が結びついた絵物語を多数世に出した。民話集、詩集もある。

やはり今日の目玉は、「ミュンヒェン一枚絵」だ。魅了された。
そして、この挿絵の美しさ・精緻さを生み出したのは技術の進歩なのだ。
講義が終わって「ミュンヒェン一枚絵」の写真を撮ろうとしたら、事務局の人に早々にスライドを片付けられてしまった。
教授に「写真を撮らせてもらえないか」と頼むと、「では部屋までいらっしゃい。原画がありますよ」と言ってくださった。
教授室まで押しかけて撮らせていただいた。貴重な写真です。

ミュンヒェン一枚絵

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