いよいよ4日目。
私はいつも、真ん中の後ろのほうの席に座る。面白いもので他の人も座るところがだいだい決まっているようだ。周りのひとの顔を覚えてきた。
さて、今日はイギリスの絵本がテーマ。講師は、名誉教授佐野晃先生。
イギリスでは、およそ19世紀の中頃に「挿絵と絵本の最初の黄金時代」がやってきたそうだ。
絵本は「多く印刷されていること」と「絵が何かを物語っていること」が、ポスターと違う点だそうだ。現代では(?)だが、当時ではということだろう。
やはり、イギリスと言えば「産業革命」ですよね。この影響は当然文化にも及んだ。
18世紀までの地主階級が支配する農村的な社会文化の中から資本家と労働者の分化が生じ、イギリス独特の上流・中産・下層の3階級からなる階層社会を生んだ。
ヴィクトリア朝社会は繁栄する中産階級の支配的な影響下で中産階級的な文化を特色とする。
それまで、美しい版画を楽しむのはブルジョアのみだったが、産業革命後、市民も版画を楽しむようになったという。
そして最初の「挿絵と絵本」の黄金期を担ったのが、ウォルター・クレイン、ケイト・グリーナウェイ、ランドルフ・コルデコットの3人だ。
この3人が共通して扱った、イギリスの伝統的な文化に深く根ざした伝承歌謡「マザーグース」それらの挿絵作品をスライドで見せてくれた。
しかしながら、この3人、本当に同世代なのね。
ウォルター・クレイン(1845〜1915)カラー絵本の先駆者。黒い線で輪郭を描き、その中を何色もの色彩で埋めた。
ケイト・グリーナウェイ(1846〜1901)カードのデザインや挿絵を描いて人気を博す。善良・美しい・静かなタッチ。躍動している絵には限度があり、弱さを感じる。(先生の感想です)
ランドルフ・コルデコット(1846〜1886)生活の雰囲気や、人物の職業・日常が描かれている。いつも踊っているような生き生きとした絵。先生曰く「ピーターラビットの絵などに影響を与えたのではないか」
これらの特徴をもつ3人の画家たちが、想像力を働かせて描いた「マザーグース」の作品達。この「マザーグース」をとうして垣間見られるイギリス人の感性・・・「大人も子どもも善人も悪人も・・・皆同じ・・・」という考えが根底にあるようだ。
これがイギリス人のユーモアに繋がっている。イギリスの絵本は、必ずしも善良・美しいものだけを描こうとしたのではない。
そしてそれは、現代のイギリスの絵品作家にも表れている。
ジョン・バーニンガム(1936〜)『ガンビーさんのふなあそび』・・・これ、私も大好きな絵本。子どもが小さい頃一緒に読んだ。
淡いタッチの色で、様々な動物達が一緒にふなあそびする様子が描かれている。先生曰く「仲間はずれにしないで受け入れるというのが、この作家のテーマのようだ」他に『いっしょに きしゃに のせってて!』など。
そして今日の目玉作品
「悲しい本」【マイケル・ローゼン作 クェンティン・ブレイク絵 谷川俊太郎訳 あかね書房】
1ページずつ読みながら、紹介してくれた。悲しみをテーマにした本だ。ジーンときた。
息子を亡くした父親が、悲しみに沈み絶望していく姿と、再び希望を見出す姿を描いている。色もモノクロとカラーとを使い分けている。内容も哲学的な詩のようだ。
大人の心にも訴えかける。印象深いものが残る。講義後、写真を撮らせてもらった。
私も1冊、手元においておきたいと思う。(誰かプレゼントしてくれないかな)
その後、現代の愉快な本「ザガズー」も紹介。
この様に「奇抜でおかしい」あるいは「悲しくも滑稽な真実」というような、心の姿勢・ユーモアの精神が、イギリスの絵本を大人にも親しませている秘密なのだと先生は語った。
同感!